『 立ち話もなんなので 』

少しだけ占いと労働相談ができる社労士のたまご。言葉と思考の森によく隠れてつぶやいています。

勇気と選択しないという選択をするということ

第一条

 


このブログは、読者のスキマ時間により生じた暇、手持ち無沙汰又は怠惰による喪失感等に対して、当該読者の余暇の教養と退屈を和らげるためにブログという媒体を通してユーモアを提供することにより、大胆かつ繊細に読者の笑いと精神の安定の向上に寄与することを目的とする。

 


 

 


第一条二項

 


書き手は、読者の笑いと精神の安定に寄与するため、常に自分の精神をごきげんに保つよう努めなければならない。

 

 

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こんばんは。

入國 七帆子でございます。

 

 

 

実家近くで用事があった、ある日。

いつもより帰宅時間が遅くなってしまったため、最寄り駅から足早に自宅へと向かっていた。帰ったら何を食べようかと考えながら、信号が青に変わるのを待つ。

そのとき、一人の男性が目の端に映った。彼は、必死にペンを走らせている。わたしの住む街は、観光地化しているところもあるため、忘れないようにしたいほどの書き留めたいことがあったのだろうとそれ以上のことは考えることはなかった。

 

 

青に変わった信号。

自宅へと歩を進める。

 

 

すると、肩を急に叩かれた。

男性が左側に立っている。

わたしを少しだけ覗き込むようにして。

 

観光にでもきたのだろう。

持ちつ持たれつ。さあ、困り事があれば言ってごらんなさい。

 

と、わたしとてこの土地に移り住んでまだ二ヵ月ほどというひよっこでしかないのに、何故か上から目線の助っ人気分で、その男性の話に耳を傾けていた。

 

 

男性は、なぜか自らの職業を話し始めた。

英語に携わっていると言っていた。

 

 

ほう。

はて、何か、仕事上で調べることがあり、この街にやってきたのだろうか。

彼が一体どんなことで悩んでいるのだろうか。根っこの部分が早く知りたくて、空腹はいつの間にか消えていた。

 

 

男「めっちゃタイプなんです」

 

男「さっき見かけて、本当にタイプだったから」

 

男「今ここで、声をかけなきゃと思って……」

 

男「友達からでいいので……仲良くしてください」

 

 

そうして手渡されたのが、ノートの切れ端に走り書きされたコメントと連絡先だった。目の端に映った走り書きの青年と目の前にナンパしてきた男性が同一人物だったのだとそのときに合点がいった。

 

わたしはお世辞にもかわいくも美しくもない。

もしかしたら、どこかでモニタリングの撮影がなされているのではないだろうか。彼は飲み会の帰りで、なんらかの罰ゲームを受ける羽目になりわたしに声をかけたのではないだろうか。

 

それとも、ネットワークビジネスや宗教の勧誘なのだろうか。もう友人知人だけではどうにもならなくなったため、何処の馬の骨かもわからぬ女に、数打ちゃ当たる方式で声をかけたのだろうか。

 

「めっちゃタイプ」とは、

そもそもわたしのどの部分を指してタイプなのだろうか。

率直に、顔面のことを言ったのだろうか。

それとも、身体目当てでとりあえずベッド上での運動会を久しくしていないから、手当たり次第に声をかけたのだろうか。

 

それとも、酔っ払っていたことが原因で視力の著しい低下を招いており、わたしを石原さとみとでも見間違えたのだろうか。

速やかに、頭のお医者さんを紹介すればよかったのかもしれないが、土地勘がまだないわたしは、救急車を呼ぶのがやっと。(おい)

 

いろんな不安と疑念が、わたしの神経細胞を駆け巡り脳内会議が繰り広げられる。

 

男性から質問を受けるが、本音を答えるよりももはや、どう答えるのが正解なのだろうかと探りながらの回答だった。

 

 

連絡先は今も手元にあるが、連絡はしていない。何人かに相談もした。わたし側のリスクを考えると連絡はできそうになかった。嬉しいよりも驚いてしまった。驚きが落ち着いたあとは、少しずつ怖いという感情が芽生え始めた。

 

 

もし、ほんとうにその男性がわたしと連絡を取りたいのであれば、いつかまた出会うだろう。けれど、それまで最寄り駅で張っている姿を想像したら、貞子よりもリッカーよりも窓ガラスを割られて怒り狂うかみなりさんよりも恐怖の対象となるに違いない。

 

できることなら、このまま再会せずにいたいものである。

 

 

ここまで読んでくださりありがとうございました。

 

ごきげんよう

 

 

入國 七帆子